海原までの道(新しい顔)

転校初日

緊張しながら、学校に向かった。

紹介された担任の先生は、優しそうな女の先生で、不安がちょっと安らいだ。

先生の案内で、クラスに行くまでの廊下を歩いていると、

ん?

これは・・・

クラス名が松と竹と書かれている。

一瞬理解できなかった。

1年松組 1年竹組 2年松組 2年竹組・・・

私のクラスは5年竹組

学年で2クラスしかないということよりも、松と竹というクラス名に、カルチャーショックを受けてしまった。

そして、その名前から「うわっ 恐ろしく田舎っぽい名前、前の学校のお友達には言えない」と思った。

それでも、どんな子がいるのかな、仲良くなれる子がいたらいいなと、ドキドキしながら教室に入った。

クラスのみんなに紹介されたが、顔を見ることができず、緊張しながら席に着く・・・

休み時間になると、物珍しそうに私の周りにクラスの中心的なグループが寄ってきた。

色々聞かれて、話をして、仲良くできるかなと思い始めていた。

給食を食べ、休み時間に校庭のブランコに行こうと誘われた。

ブランコに乗ると、一人の子が口火をきった。

「ねえねえ、なんで転校してきたの?」

返事に一瞬困っていると

別の子が、

「私、知っているよ。お父さんとお母さんが離婚したんだよね。それでお母さんのお家がこの近くだから、引っ越してきたんだよね」

「えーっ  そうなの?離婚ってどんな感じなの?どうして離婚したの?ねえ、教えて」

「かわいそうな子なんだね。大丈夫だよ仲良くしようね」

・・・・何も言えなかった。

子供は残酷だ。素直に感じたままを言っているのはわかるが、私の心は一気にえぐられたようだった。

かわいそうな子・・・私はかわいそうな子なのか?

かわいそうという言葉が、こんなに人の心をしめつけるものなんだと初めて知った。

馬鹿にされているような、さげすまれているような、悲しくて悔しくて、いたたまれなかった。

どうしようもない感情が込み上げてきた。

その頃はまだ、今のように離婚する人は少なく、その学校では私の親しか離婚してなかった。

いくら子供でも、人の心に土足でずかずか上がり込んでくるようなこの子達とは仲良くはできないなと思った。

いつか絶対あなた達より幸せになってやる。

絶対負けないと誓った。

この時から、どうしたらいい方で目立つか、そればかり考えて行動するようになった。

ここで、はすっぱな口をきいて反抗的な態度をとれば、やっぱり親が離婚しているからとか、片親だからそんな様なんだとか思われるのが嫌だった。私のせいで母が悪く思われるのは本当に嫌だった。

私がいい子でいることが、その時の私にできる母を守るすべだと思った。

私が頑張れば、いい子でいればきっと、周りが変わるはず・・・

そんな考えから、意識的に自分に嘘をついて生きていく初めの一歩だった。

そのグループから離れ、一人で過ごしていた後に、優しく話しかけてきた子達と仲良くなり、生涯の友達に出会えた。

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