海原までの道(盗み)

ある日、父の机の下にアタッシュケースを見つけた。

何が入っているのかわからない、だけど見るからに大事そうで、中に何が入っているのか興味があった。時たま父がそれを嬉しそうに開けているのを見ていたので、父がいないときに開けてみた。

周りを見渡してそっとカバンに手を伸ばす。

鍵をかける場所がある。

開かないかも・・・・

カチャカチャしてみると、パかッと開いた。

鍵はかかってなかった。

恐る恐るかばんを開けてみた。

うわっ! 札束だ!

それも子供の私には、普段手に取ったことのない1万円札が、たくさん入っていた。

周りを見渡し、周りの音を気にしながら、誰にも見られてないことを確認すると、すかさず1枚ポケットにねじ込んだ。

ドキドキした。悪いことだとわかっていた。

でも、不思議だ。

ポケットに1万円札が入っているだけで、なんでもできるような大きな気持ちになった。

なんでもできる魔法使いになった気分だった。

どうしよう、どこで使おう、何を買おうかな、ドキドキワクワクしながら、弟を連れて近くの駄菓子屋に行った。

弟を連れて行ったのは自分だけ使うのが後ろめたい気持ちがあり、共犯者が欲しくてと何も知らない弟を巻き込んだのだ。

弟の好きなものを選ばせ、私も好きなものをたくさん買った。

お金を出して、たくさんのものを買うのはすごく気持ちよかった。

うきうき気分で家に帰った。

帰ってすぐに母に問い詰められた。

「どうしたの?どこからお金を出したの?」

えっ?なんで?

ママ、どこかで見ていたの?

なんで?

どうしてわかっちゃったんだろう

駄菓子屋のおばさんが、おかしいと思ってすぐに母に電話したのだ。

それはそうだ、1万円を持って小さな子が駄菓子屋で買い物をするなんて、普通ではありえないこと。

母に怒られながら、盗んだことを謝りながら私が考えたのは、次は近所で使ってはいけない、親の目の届かないところで使おう!

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