父の母に対する暴力は、だんだん激しくなっていった。
暴力がひどくなるにつれて、母が実家に帰る頻度が増していった。
私は学校があるからということで、家に残された。
母が居なくなると、知らないお姉さんが家に来るようになった。
優しいお姉さんだった。子供の頃は関係性がわからず、優しくされれば嬉しかった。
でも、ある日父に寝室に来るようにと呼ばれた。
そこには父と、優しいおお姉さんが裸で横たわって、お酒を飲んでいた。
私は見てはいけないものを見たような気がして、あわてて出ようとすると父に止められ、そこにいるようにと怒られた。
私も母と同じように叩かれる! 恐怖のあまり座り込んでしまった。
そのお姉さんと父はすぐに性行為を始めた。
それがどいうことなのかわからず、でも気持ちが悪くて、見てはいけないものをみせられて、でも怖くて動けなくて・・・・
優しい父は、もうどこにもいなかった。
しばらくすると父から、これでも食べろと近所のパン屋でもらったパンの耳を与えられた。
母がいなくなってから、給食以外ご飯を食べていなかった私は、それをほおばった。
そんなことが数日続いた。
母が元気なころ、近所のパン屋さんで買い物をするとパンの耳がおまけでついてきた。
母は、それを油で揚げて砂糖をふっておやつにしてくれた。
おいしかった。温かく優しい味だった。
パンの耳をほおばりながら、
なんで私は置いて行かれるの・・・・
なんで弟たちだけ連れて行くの・・・・
なんでこんなものを見なきゃいけないの・・・
いい子じゃないから?
なんで、なんで・・・・・
子供の私には大人の事情なんて分からず、心が凍り付いていった。
そんな生活の中で唯一私の見方は、飼い犬のチロだった。
チロは、私が学校から帰ってくると、たまに首輪をすり抜け、門のところでしっぽを振って嬉しそうに待っていた。私もそれが、うれしくてチロを抱きしめ一緒に遊んだ。
ある日、また首輪をすり抜け、門のところで待っていたら、私が帰る前に訪ねてきた人にかみついてしまい、怒ったその人は保健所に連れて行くと言う。
保健所って何?
父に聞くと犬を殺処分する場所だという。
私は、一生懸命謝った。何度も何度も誤った。
心の中で、私からチロを取り上げないで、チロしかいないの 神様お願いです。
一生懸命に誤って、許してもらえた。
助かった。よかった。よかったねチロ
それから数日が流れ・・・
ある日家に帰ると、お手伝いのおばさんが
チロの様子がおかしいよとあわてて私に言ってきた。
え?
急いでチロの所に走っていく
そこにはぐったりしたチロがいた。
私は目を疑った。
なんで?
昨日まであんなに元気だったのに・・・
どうして・・・
「チロ、チロどうしたの?どこか痛いの?」
嫌だからね、元気にならないと嫌だからね
一人にしないでね、お願いだよ
死なないで、死なないでよー
チロの目から涙がこぼれた。
それからしばらくして静かに逝ってしまった
庭の隅にチロを埋めて、お墓を作った。
一緒にいてくれてありがとうって言えなかった。
ぼーっとしながら空を見ていた。
・・・本当に独りぼっちだ・・・
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