新しい家ができた。
正面から見ると、広い庭の奥に白い大きな家、手前には父の経営する整骨院と、今度はサウナ施設も建っていた。
「わあ~ ここが私のお家?」パパもママも弟たちも、曾祖母も、みんな笑顔で家に入った。
玄関を入ると 広々とした応接間、私のピアノも置いてある。
応接間に入り大きな窓を開けると窓から、池がのぞき見えそこから鯉に餌をあげられるようになっている。
玄関の真正面には、赤いじゅうたんの階段!シンデレラになった気分だった。
応接間の隣の部屋は、キッチンと居間が続いていた。
真新しい大きな黄緑色の食器棚、ガスコンロ、オーブン、調理台も黄緑色の優しい色合いのキッチン
大きな食卓、これから毎日ここで母の作った料理が並び、家族の笑顔であふれた時間が過ごせると思った。
キッチンの奥には納戸と、お風呂とトイレがあり
居間の横には曾祖母の部屋があり、その横には客室も並んでた。
二階に上がると両親の寝室、弟達の部屋、納戸にトイレ、そして私の部屋があった。
今まで家族で同じ部屋に、みんなで寝ていたが、今度は自分一人の部屋があった。
自分の部屋に入ると、勉強机、そして優しい色のピンクカバーが掛かったベットが置かれていた。
わぁ~ベットだ。座ると弾力があってトランポリンみたいだ。
うれしくてうれしくて、何度も何度もはねてみた。
窓にはレースのカーテンと重厚なデザインのカーテン
一人で寝るのは寂しいけれど、自分の部屋があることがとてもうれしかった。
しばらくすると、庭に父が猟をするときに一緒に連れていく、ドーベルマンやポインターの猟犬を飼うことになった。中庭には大きな鳥かごが備えられたくさんの小鳥も増えていった。
池にはアヒルも泳いでる。
応接間にはオウムも来た。
人の声をまねることの上手なオウムだった。
ただいま~と帰ると、母の声で「は~い」と答える。
すっかり母がいるものだと思って話し掛けると、返事がない。
オウムが答えていたのだ。
お客さんが来ても、
「ごめんくださ~い」というと
母の声で「は~い」
と答えるので、ずーっと待っていることもあった。
猟犬たちは庭の真ん中で、立派な犬小屋で飼われていたが、
裏庭で、私は昔から飼っている雑種犬を飼っていた。
名前はチロ、とても人懐っこくかわいかった。
ドーベルマン達がドックフードで育つ中、チロはいつも残飯だった。
それでもチロはおいしそうに食べていた。
そんなチロの顔を見ているのが好きだった。
引っ越してからしばらくは、穏やかな日が続いた。
父も母をあまりはたかなくなった。
これからは、幸せな日々が続くと思っていた。
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