その頃お友達が誕生日を迎えると、仲のいい子を自宅に呼び、小さなパーティーを開くことがよく行われていた。
普段仲良くしているお友達の誕生日会に呼ばれ、プレゼントを用意し遊びに行くと、たくさんのお料理とケーキが用意されていて、お友達のご家族とお友達、みんなで乾杯をしておいしくいただいたり、ゲームをしたり過ごすことがとてもうれしくて、楽しかった。
私の誕生日は夏休みのど真ん中なので、招待しても夏休みの家族旅行でいなかったりするので、日をずらして誕生日会を開いたりしていたが、お友達のお家と唯一違うことは、父親がその席にいないことだった。母に大きなケーキを用意してもらっても、たくさんのご馳走を用意してもらってプレゼントをもらっても、寂しかった。
いない人がいないないのと、いる人がいないのでは大きな差がある。
普通って人それぞれ違うと思うし、ないものねだりなのはわかっていても、その頃の私は、自分の家は普通ではないと思っていた。
普通になれたらいいな、優しいパパがいてくれたら・・・
時々夜中になると、母が私の部屋に入ってきて、一緒にベットに入り泣いていた。
どうしたらいいのか、何を言ったらいいのかわからず、ただ側にいた。
ある日、夜中に母に起こされ、着替えて知らないお店に連れていかれた。
父の彼女の経営するバーだった。
子供の私から見たら、異様な雰囲気の場所だった。
奥の席に父がいた。母と父、そしてきれいなお姉さんと言い争い始めた。
薄暗い店内のカウンターに座らさせられて待っていると、目の前にガラスのカップに入った温かいレモンティーを出してくれた。
初めて飲むレモンティー、酸っぱくておいしくなかった。
早く帰りたかった。
それから何日かして、いつものように学校から帰ると、なんだか家の様子がおかしい・・・
「ママーっ ママーっ ただいまー」
返事がない
「ママーっ、どこー?」
二階に駆けあがる。
寝室、私の部屋、弟の部屋、どこにもいない・・・
ふと納戸が気になり、開けてみた。
そこには放心状態の母がいた。
首にひもが巻いてある
上を見た・・・
・・・母は首つり自殺を試みたが、未遂に終わったみたいだ。
母に抱きついて泣いた。
泣きながら、なんで泣いているのかわからなくなっていった。
悲しくて、何もできなくて、寂しくて、どうしていいのかわからなくて・・・
でも、それはとてつもなく裏切りに感じられた。
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