物心ついた時から、誰かに大きくなったら何になりたいの?と聞かれると、
薬剤師と答える私がいた。
薬剤師の仕事内容を理解していってたわけではなく、母に小さな頃から薬剤師になるのよ
大きくなったら薬剤師になるのよと言い続けられていたので、そうなりたいのではなく、この質問が来たらこの言葉を出せばいいと思い込んでしまったのです。
自分から大きくなったらこうなりたいと本当のことを言えば、母が悲しむだけだと思っていたので本当の気持ちを押し殺し口に出すことはなかった。
名家という家に嫁いだ母は、とてつもないプレッシャーを抱えていて、子供をどう育てるかで母の立場が変わることを恐れていた。
私に対しての教育は間違ってはならない、後ろ指刺されるようにしてはいてない、できればいつもトップにいなければならない、そんな思いが今後私に重くのしかかってくることになるのです。
でも、100点取れば母が喜ぶし、褒められる。褒められたいから頑張る。ママの言うとおりにすればいいんだ。そう思っていた。
ふと気が付くと曾祖母が、毎朝お水とお茶を仏壇に供えて拝んでいる姿をみて、なんで毎日そうしているのか尋ねると、
「毎日仏様に手を合わせてお願い事をすると神様が願い事をかなえてくれるんだよ」と言うので、
えっそんなことがあるの?それはいいこと聞いたと思い、毎日曾祖母と仏壇の前に座りひたすら願った。祖母はただ、仏壇の前に座りご先祖様に手を合わせることを習慣づけたかっただけなのかもしれないが、曾祖母の言葉は私には光のように思えた。
「サリーちゃんのような魔法使いになれますように・・」自分の欲望は軽はずみに口にしてはいけないからこそ、心の中で声にできない
魔法使いになれば、パパもママを叩かないようにできるし、大好きなリカちゃん人形のお洋服もたくさん買えると思っていた。
小学校に上がると、それまで住んでいた家を建て替えるため父方の祖母の家に仮住居として、住むことになった。
小さな古いお家だったけど、別の場所に引越しをすることに何だか新しい世界に行くようで、ワクワクしていた。
学校に行く道も違うので、毎日新しい発見があったり、近所においしい焼きそば屋さんがあったり、初めて行く駄菓子屋さんがあったり、毎日が楽しくなると思っていた。
でも・・・
夜になると、また酔って母を叩く父がいた・・
ある夜、私達子供と寝ていた母をたたき起こし父が叩いていた。
私たち兄弟は部屋の隅で小さくなって震えていた。
父が、「お前たち何見てんだ!早く寝ろ!」
するとすかさず母が、「ちゃんと見なさい。ちゃんと見ておくのよ」と・・・
私達は恐怖のあまり、なすすべがなかった・・・
早くパパが寝てしまいますように・・・
ママをはたくのをやめますように・・・
震えながらじっと時間が過ぎるのを待っていた。
何度もこの光景を見ていても、なんで母が叩かれているのかわからなかった。
ママはどんな悪いことをしたんだろう・・・
パパはママのこと嫌いなのかもしれない・・・
何をしたんだろう・・・
でも、もしかしたらいつか自分も叩かれるかもしれないという恐怖から、叩かれないようにしなくちゃ、嫌われないようにしなくちゃと心の中で思っていた。
コメント